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No.1表示と景品表示法違反について

2022/08/21 22:55
No.1表示と景品表示法違反について

 文責:弁護士 干場 智美 

 

 消費者庁は、本年6月15日、エステサロン運営会社に対し、同社がウェブサイトにおいて、「あのAリサーチ(※注1)で2冠達成★バスト豊胸&瘦身部門第1位!」、「バストアップ第1位 施術満足度」、「ボディ瘦身第1位 施術満足度」等と表示したこと(以下まとめて「本表示」)が、サービスの内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するとして(優良誤認表示)、同法に基づく措置命令(以下「本措置命令」)を行いました(令和4年6月15日付消費者庁ニュースリリース)。

 

 事業者が提供する商品・サービスの顧客満足度等について、「No.1」、「第1位」、「トップ」、「日本一」等などと強調する表示については、広告に対する法規制の分野においては、一般に「No.1表示」と呼称されております。本稿では、「No.1表示」の一般的な景品表示法上の問題点についてご説明するとともに、実務上の留意点について簡単に考察したいと思います。

 

※注1 実在のマーケティングリサーチ会社に対する一般的な呼称が入りますが、本稿では「Aリサーチ」と表記します。

1.優良誤認表示とは?

 そもそも、消費者庁は、本表示が優良誤認表示に該当するとして、本措置命令を行ったわけですが、「優良誤認表示」とは何でしょうか。

 

   優良誤認表示(景品表示法5条1号)とは、

  •  商品・サービスの内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示
  •  商品・サービスの内容について、一般消費者に対し、事実に相違して競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示

  を指します。

2.「No.1表示」と優良誤認表示

 No.1表示は、同種の商品・サービスの内容等に関して比較又は差別化に資するための明確な数値指標となるものであることから、一般的には一般消費者にとっては有益な情報であると捉えられているところです(平成20年6月13日付公正取引委員会事務局「No.1表示に関する実態報告書」(以下「本報告書」)6頁)。

 

 もっとも、商品・サービス等の内容の優良性を表すNo.1表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認され、優良誤認表示として景品表示法上問題となり得ます(本報告書6頁)。

 

 では、「商品・サービス等の内容の優良性を表すNo.1表示」とは具体的にはどのような事項に対するNo.1表示」を指すのでしょうか。

 

 本報告書において、公正取引委員会は、収集した表示物におけるNo.1表示を種類ごとに分類していますが、商品等の内容の優良性を直接示すものとして、上位から、顧客満足度、サービスの内容、入学試験の合格率・合格者数、商品の効果・性能、商品の内容を挙げております(本報告書2頁~3頁・6頁)。

 

 また、公正取引委員会は、売上実績に関するNo.1表示についても、商品等の内容の優良性を直接示すものではないものの、消費者モニター調査の結果を踏まえ、一般消費者が初めて購入する又は頻繁には購入しない商品等の場合、高額な商品等の場合、競合する商品等の違いが分からない場合、利用した後でないと良さが分からない商品等の場合などにおいては、商品等の内容の優良性を示すときがあるとしています(本報告書3~4頁、6頁)。

 

 したがって、事業者が、広告において、これらのNo.1表示を行う場合、単に優良誤認表示の該当性を検討するだけではなく、上記の種類のいずれに該当するかについても意識するとリスクの大小が整理しやすいのではないかと考えます。

 

※注2 「安さNo.1」等、取引条件の有利性を表すNo.1表示については、有利誤認表示に該当する可能性がありますが、本稿では割愛します。

3.適正なNo.1表示のための要件

 No.1表示が優良誤認表示に該当しないためには、

  •  ①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
  •  ②調査結果を正確かつ適正に引用していること

のいずれの要件も充足する必要があります(本報告書7頁)。

 

 このうち、①客観的な調査といえるためには、

  •  当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること
  •  社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法等で実施されていること

が必要であり、これらを満たさない場合にはNo.1表示の根拠の客観性・信頼性を欠き、景品表示法上問題となるおそれがあるとされております(本報告書7頁)。

4.本表示が優良誤認表示に該当するか

 本措置命令によれば、「Aリサーチ」と呼称されるマーケティングリサーチ会社が実施した調査は、エステ運営会社が提供する豊胸施術・痩身施術に係るサービス及び同種・類似のサービスを利用した者に対する調査ではなかったとのことです。

 

 施術満足度は、上記2で述べたNo.1表示の種類でいえば、「顧客満足度」に含まれるところ、顧客満足度は、当然のことながら、実際に同種・類似の商品を購入し、又はサービスの提供を受けた方の感想に依拠するものであることから、これらの方を調査対象者としなければ、上記3の①「客観的な調査に基づいていること(社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法等で実施されていること)」の要件を充足しているとはいえません。

 

 また、Aリサーチの調査結果によれば、当該エステ運営会社に係る施術満足度の順位は第1位でなかったとのことです。この点は、上記3の②「調査結果を正確かつ適正に引用していること」の要件を充足しません。

 

 消費者庁は、以上の理由から、優良誤認表示に該当すると判断したものと考えます。

5.実務上の留意点

 これまで述べてきたとおり、No.1表示を行うことは、優良誤認に該当するとして、措置命令(景品表示法7条1項)の対象となり得ることから、表示を行う際には、上記3の①「客観的な調査に基づいていること」及び②「調査結果を正確かつ適正に引用していること」の要件を充足しているか否かの判断を慎重に行う必要があります。

 

 もっとも、実務上は、上記3の①「客観的な調査に基づいていること」の要件について、当該調査が客観的であるか否かの判断が困難であるケースも多いところです。

 

 この点について、本措置命令の事案では問題となりませんでしたが、公正取引委員会は、「顧客満足度No.1」と表示する広告について、以下のような場合には、客観的な調査とはいえず、景品表示法上問題となるおそれがあると指摘しています。

  • 顧客満足度調査の調査の調査対象者が自社の社員や関係者である場合又は調査対象者を自社に有利になるように選定するなど無作為に抽出されていない場合
  • 調査対象者数が統計的に客観性が十分確保されるほど多くない場合
  • 自社に有利になるように調査項目を設定するなど調査方法の公平性を欠く場合(以上本報告書7頁)

 

 すなわち、少なくとも、顧客満足度に関するアンケート実施の際には、「無作為」・「統計に必要な対象者数の確保」・「調査方法の公平性」の三点を意識する必要があると考えます。

 

 また、昨今では、景品表示法に抵触しないように、客観的な根拠資料を得る目的でマーケティングリサーチ会社にアンケート等を依頼する調査(いわゆる「No.1調査」)も増加している一方で、No.1を取得させるという結論ありきの恣意的で非公正な調査実施するマーケティングリサーチ会社も散見されるとの指摘がなされています(令和4年1月18日付一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会「非公正な『No.1調査』への抗議状」)。

 

 非公正なNo1調査により表示されたNo.1表示については、少なくとも、「調査方法の公平性」を欠くものとして、優良誤認表示に該当すると判断されるおそれもあるところですので、特に留意する必要があるものと考えます。

6.終わりに

 No.1表示の顧客誘引性や訴求力を考慮すると、多くの事業者においては、これを利用したいという意向が強いものと理解しておりますが、以上の内容を踏まえると、あくまでも公正な調査結果に基づいて表示をされたいと考えているところです。

 

  弊事務所では、様々な業種の企業様の広告のリーガルチェックをさせていただいておりますので、お気軽にお問合せください。

 

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