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インサイダー取引規制とは-具体的事例の紹介

2023/02/25 21:55
インサイダー取引規制とは-具体的事例の紹介

文責:スパークル法律事務所

 

 インサイダー取引規制の概要と、近時の事例について、紹介します。

インサイダー取引とは

 インサイダー取引とは、規制の対象となる有価証券についての重要事実を知った会社関係者が、その事実が公表される前に、その有価証券の取引を行うことをいいます。例えば、会社に勤めていると、当然ながらその会社の内部にいるからこそ知ることができる情報が多々あります。その中には、新製品を販売することになった、工場で火災があった、など、その会社の株を買おう、売ろうというような、投資判断に影響する重要な事実も存在する場合があります。そのような情報を知った会社関係者が、その事実が公表されて、一般投資家がその事実を知る前に、その会社の株を買ったり、売ったりすることはがインサイダー取引に該当します。

 

 インサイダー取引は、金融商品取引法で厳しく禁止されています(同法166条、167条、167条の2)。インサイダー取引を許容してしまうと、情報を知っている者は有利に取引を行うことができる一方で、情報を知らされていない一般の投資者は、不利な立場で取引を行うこととなり、証券市場の信頼性が損なわれかねないことになるからです。

 

166条 会社関係者のインサイダー取引
167条 公開買付等関係者のインサイダー取引
167条の2 未公表の重要事実の伝達

 

インサイダー取引を行った場合の罰則規定

 インサイダー取引を行うと、刑罰を科されたり、又は課徴金が課されたりすることがあります。

 

刑罰

5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処され、またはこれを併科される(197条の2第13号)。また、インサイダー取引によって得られた財産は没収される。

課徴金

売付け等の場合:売付け等の総額-(公表後2週間の最安値×売付け等数の数量)

買付け等の場合:(公表後2週間の最高値×買付け等数の数量)-買付け等の総額

 

重要事実とは

 インサイダー取引が問題となるのは、会社関係者等が、業務等に関する重要事実を職務等に関して知った場合です。ここで、「重要事実」とは、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実のことであり、以下の4種類があります。ただし、軽微基準に該当すれば、インサイダー取引規制は及びません。

 

決定事実 上場会社等の業務執行を決定する機関が一定の事項を決定した事実
発生事実 上場会社等の意思決定にかかわりなく生じる事実
業績予想の修正等 決算情報について、公表がされた直近の予想値と新たに算出した予想値において差異が生じた事実
バスケット条項 上記の3つに該当しない重要事実

 

情報伝達・取引推奨に関する規制

 インサイダー取引それ自体だけではなく、情報伝達・取引推奨行為も法律で禁止されています。

 

対象者

職務等に関して重要事実等を知った会社関係者・公開買付等関係者

行為

①情報伝達行為:重要事実を他人に対して伝達すること 又は

②取引推奨行為:他人に対して公表前に売買等をすることを勧めること

目的要件

公表前に売買等をさせることにより

①他人に利益を得させる目的 又は

②他人の損害の発生を回避させる目的

取引要件

当該他人が、公表前に売買等をした

 

 

具体的事例

 証券取引等監視委員会(SESC)の公表資料等から、近時の具体的事例を収集しました。どのような事例が摘発されているか、参考としてください。

 

■1 東都水産株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について

違反態様 内部者取引
事件の概要

三印三浦水産株式会社(以下「犯則嫌疑法人」という。)は、水産物の販売、貿易業等を目的とする株式会社であり、Aは、同社の代表取締役専務として同社の業務全般を実質的に統括するとともに、東京証券取引所に株券を上場している東都水産株式会社(以下「東都水産」という。)の社外取締役を務めていた。Aは、その職務に関し、東都水産の役員らがその職務に関し合同会社ASTSホールディングスからの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関が東都水産の株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知った。

 

Aは、かかる公開買付けの実施に関する事実の公表前に、東京証券取引所において、犯則嫌疑法人名義で東都水産の株券合計8000株を代金合計約2900万円で買い付けた。

 

また、Aは、あらかじめ東都水産の株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前に、知人に対し、前記公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた同人が、同公開買付けの実施に関する事実の公表前に、東都水産の株券合計500株を代金合計約200万円で買い付けた。

処分 刑事告発

 

■2 名古屋電機工業株式会社社員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 

違反態様 伝達を受けた者による内部者取引
事件の概要

課徴金納付命令対象者は、名古屋電機工業株式会社(以下「名古屋電機工業」という。)の社員から、同人がその職務に関し知った、名古屋電機工業の属する企業集団の令和2年4月1日から令和3年3月31日までの事業年度の経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益(以下「当期純利益」という。)について、令和2年5月12日に公表がされた直近の予想値に比較して、名古屋電機工業が新たに算出した予想値において、投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じた旨の重要事実の伝達を受けながら、名古屋電機工業において新たに算出した同事業年度の予想値の公表がされる前に、自己の計算において、名古屋電機工業株式1000株を買付価額合計137万4000円で買い付けた。

処分 課徴金73万円

 

■3 大成株式会社社員による公開買付けの実施に関する事実に係る取引推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について

違反態様 取引推奨行為
事件の概要  課徴金納付命令対象者は、大成株式会社(以下「大成」という。)の社員であるが、その職務に関し、大成の社員甲がその職務に関し株式会社アイ・ケイ・ケイからの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関が大成株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実をに知りながら、上記事実の公表がされるより前に、被推奨者に対し、上記事実が公表される前に大成株式の買付けをさせることにより同人に利益を得させる目的をもって、同株式の買付けをすることを勧めたものである。
 被推奨者は、上記事実の公表がされた令和3年2月8日より前に、大成株式合計1200株を買付価額合計93万7800円で買い付けたものである。
処分 課徴金21万円

 

■4 株式会社関西みらいフィナンシャルグループ社員による内部者取引及び取引推奨行為並びに当該社員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

違反態様 取引推奨行為及び伝達を受けたものによる内部者取引
事件の概要 1 課徴金納付命令対象者⑴は、株式会社関西みらいフィナンシャルグループ(以下「関西みらいFG」という。)の社員であるが、その職務に関し、①関西みらいFGの社員甲がその職務に関し株式会社りそなホールディングス(以下「りそなHD」という。)からの伝達により知った、りそなHDの業務執行を決定する機関が関西みらいFG株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実及び②関西みらいFGの業務執行を決定する機関が、りそなHDを完全親会社とし、関西みらいFGを完全子会社とする株式交換を行うことについての決定をした旨の重要事実を知った。
 課徴金納付命令対象者⑴は、上記各事実の公表がされる前に、第三者名義の証券口座で自己の計算において、関西みらいFG株式合計1万317株を買付価額合計452万2705円で買い付けた。
 また、課徴金納付命令対象者⑴は、被推奨者乙に対し、上記各事実の公表がされる前に、関西みらいFG株式の買付けをさせることにより同人に利益を得させる目的をもって、同株式の買付けをすることを勧めたものである。被推奨者乙は、上記各事実の公表がされる前に、関西みらいFG株式合計5200株を買付価額合計226万4760円で買い付けた。

処分 課徴金163万円
事件の概要 2 課徴金納付命令対象者⑵は、関西みらいFGに勤務していた課徴金納付命令対象者⑴から、同人がその職務に関し知った、①関西みらいFGの社員甲がその職務に関しりそなHDからの伝達により知った、りそなHDの業務執行を決定する機関が関西みらいFG株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実及び②関西みらいFGの業務執行を決定する機関が、りそなHDを完全親会社とし、関西みらいFGを完全子会社とする株式交換を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受けながら、上記各事実の公表がされるより前に、第三者名義の証券口座で、自己の計算において、関西みらいFG株式合計2000株を買付価額合計81万4000円で買い付けた。
処分 課徴金31万円

 

■5 ソフトブレーン株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について

違反態様 内部者取引
事件の概要 1 犯則嫌疑者Aについて
 犯則嫌疑者Aは、東京証券取引所に株券を上場していたソフトブレーン株式会社(以下「ソフトブレーン」という。)の内部監査室長を務めていたものであり、その職務に関し、同社取締役らがその職務に関しアント・キャピタル・パートナーズ株式会社(以下「アント社」という。)からの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知った。
 ①Aは、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前に、東京都内において、知人であるBに対し、あらかじめソフトブレーンの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同公開買付けの実施に関する事実を伝達した。これにより伝達を受けた同人が、同公開買付けの実施に関する事実の公表前に、ソフトブレーンの株券合計2万株を代金合計約670万円で買い付けた。
 ②Aは知人であるCと共謀の上、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前に、同人名義で、ソフトブレーンの株券合計約1万株を代金合計約390万円で買い付けた。
 ③Aは前記公開買付けの実施に関する事実の公表前に、知人であるDに対し、あらかじめソフトブレーンの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同公開買付けの実施に関する事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた同人が、同公開買付けの実施に関する事実の公表前に、同人名義で、ソフトブレーンの株券合計2万7000株の買い注文のうち約1000万円相当分を同人の分として発注し、約定した合計2万7000株のうち2万4545株を代金約980万円で買い付けた。
 ④Aは、前記Dと共謀の上、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前に、同人名義で、ソフトブレーンの株券合計2万7000株の買い注文のうち約100万円相当分をAの分として発注し、即日、約定した株のうち2455株を代金合計約90万円で買い付けた。
  2 犯則嫌疑者Bについて
 犯則嫌疑者Bは、Aから、同人がその職務に関し知った、同社取締役らがその職務に関しアント社からの伝達により知った同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受け、同公開買付けの実施に関する事実の公表前に、ソフトブレーンの株券合計2万株を代金合計約670万円で買い付けたものである。
  3 犯則嫌疑者Cについて
 犯則嫌疑者Cは、Aの知人であるもの、前記Aは、東京証券取引所に株券を上場していたソフトブレーンの内部監査室長を務めていたものであり、その職務に関し、同社取締役らがその職務に関しアント社からの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知った。Cは、前記Aと共謀の上、前記公開買付けの実施に関する事実の公表前に、C名義で、ソフトブレーンの株券合計約1万株を代金合計約390万円で買い付けた。
  4 犯則嫌疑者Dについて
 犯則嫌疑者Dは、東京証券取引所に株券を上場していたソフトブレーンの内部監査室長を務めていたAから、同人がその職務に関し知った、同社取締役らがその職務に関しアント社からの伝達により知った同社の業務執行を決定する機関がソフトブレーンの株券の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受け、同公開買付けの実施に関する事実の公表前に、ソフトブレーンの株券2万7000株の買い注文のうち約100万円相当分は前記Aと共謀の上、約1000万円相当分はD単独で発注し、約定した合計2万7000株のうち前記Aと共謀して2455株を代金約90万円で、D単独で2万4545株を代金約980万円で買い付けた。
処分 刑事告発

 

■6 公開買付者との契約締結交渉者の役員によるファミリーマート株式に係る内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

違反態様 内部者取引
事件の概要  課徴金納付命令対象者は、A法人の役員であるが、A法人と伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事」という。)等との間の、株式会社ファミリーマート(以下「ファミリーマート」という。)株式に対する公開買付けに関する契約の締結の交渉に関し、伊藤忠商事の業務執行を決定する機関が、ファミリーマート株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知りながら、上記事実が公表される前に、ファミリーマート株式合計2000株を買付価額合計349万7800円で買い付けたものである。
 
処分 課徴金167万円

 

■7 株式会社ジャストプランニング役員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

違反態様 伝達を受けた者による内部者取引
事件の概要  課徴金納付命令対象者は、株式会社ジャストプランニング(以下「ジャストプランニング」という。)の役員甲から、①同人がその職務に関し株式会社オージス総研(以下「オージス総研」という。)からの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関がジャストプランニング株式を買い集めることについて決定した旨の公開買付けに準ずる行為の実施に関する事実及び②同人がその職務に関し知った、ジャストプランニングの業務執行を決定する機関がオージス総研と業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受けながら、上記各事実の公表がされる前に、ジャストプランニング株式合計11万4700株を買付価額合計5051万950円で買い付けたものである。
処分 課徴金1922万円

 

■8 テラ株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について(1)

違反態様 内部者取引
事件の概要 犯則嫌疑者Aは、東京証券取引所の有価証券市場に株券を上場していたテラ株式会社(以下「テラ社」という。)との間で、新型コロナウイルス感染症肺炎に対する間葉系幹細胞を用いた治療法の開発に関する共同研究に係る業務提携契約の交渉をしていたCENEGENICS JAPAN株式会社(以下「セネジャパン社」という。)の役員から、同人が同契約の交渉に関し知った、テラ社がセネジャパン社との間で業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受け、同事実の公表前に、テラ社の株券合計6500株を代金合計約90万円で買い付けたものである。
処分 刑事告発

 

■9 テラ株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について(2)

違反態様 内部者取引
事件の概要 犯則嫌疑者Aは、東京証券取引所の有価証券市場に株券を上場していたテラ株式会社(以下「テラ社」という。)との間で、新型コロナウイルス感染症肺炎に対する間葉系幹細胞を用いた治療法の開発に関する共同研究に係る業務提携契約の交渉をしていたCENEGENICS JAPAN株式会社(以下「セネジャパン社」という。)の役員から、同人が同契約の交渉に関し知った、テラ社がセネジャパン社との間で業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同事実の公表前に、自己名義ほか1名義で、テラ社の株券合計約15万株を代金合計約2230万円で買い付けたものである。
処分 刑事告発

 

■10 テラ株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について(3)

違反態様 内部者取引
事件の概要  犯則嫌疑法人内田建設株式会社は、不動産の売買、仲介、管理、賃借業務等を目的とする会社、犯則嫌疑者Aは、犯則嫌疑法人の代表取締役であるが、東京証券取引所の有価証券市場に株券を上場していたテラ株式会社(以下「テラ社」という。)との間で、新型コロナウイルス感染症肺炎に対する間葉系幹細胞を用いた治療法の開発に関する共同研究に係る業務提携契約を締結していたCENEGENICS JAPAN株式会社の役員から、令和2年5月下旬頃、同人が同契約の履行に関し知った、同契約に基づき行われていた臨床試験において1例目の投与患者の症状に改善が認められたなどのテラ社の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実の伝達を受け、同事実の公表前に、犯則嫌疑法人名義で、テラ社の株券合計2万株を代金合計約1740万円で買い付けたものである。
処分 刑事告発

 

■11 アサヒ衛陶株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について

違反態様 内部者取引
事件の概要 犯則嫌疑者Aは、東京証券取引所の有価証券市場に株券を上場しているアサヒ衛陶株式会社(以下「アサヒ衛陶」という。)の代表取締役社長を務めていたものであり、その職務に関し、アサヒ衛陶が、株式会社ヤマダ電機との業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実を知ったものである。犯則嫌疑法人上中商事株式会社(以下「犯則嫌疑法人上中商事」という。)は、投資事業等を目的とする会社、犯則嫌疑法人ホライズン株式会社(以下「犯則嫌疑法人ホライズン」という。)は、有価証券の保有、運用及び投資等を目的とする会社、犯則嫌疑者Bは、犯則嫌疑法人上中商事の代表取締役かつ犯則嫌疑法人ホライズンを実質的に経営するものである。
1 A及びBは、共謀の上、前記重要事実の公表前に、株式会社サクシード名義で、アサヒ衛陶株券合計5万株を代金合計約580万円で買い付けた。
2 Bは、Aから、同人がその職務に関し知った前記重要事実の伝達を受け、
①前記重要事実の公表前に、ホライズン株式会社名義で、アサヒ衛陶株券合計26万株を代金合計約3380万円で買い付け
②前記重要事実の公表前に、株式会社サクシード名義で、アサヒ衛陶株券合計約18万株を代金合計約2430万円で買い付け
③前記重要事実の公表前に、自己名義ほか1名義で、アサヒ衛陶株券合計約20万株を代金合計約2870万円で買い付け
た。
処分 刑事告発

 

■12 株式会社レオパレス21社員からの情報受領者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

違反態様 情報受領者による内部者取引
事件の概要 課徴金納付命令対象者は、株式会社レオパレス21(以下「レオパレス」という。)の社員甲から、同人がその職務に関し知った、レオパレスの業務執行を決定する機関が、同社の発行する株式を引き受ける者の募集を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受けながら、上記重要事実の公表される前に、自己の計算において、レオパレス株式合計18万株を買付価額合計3009万7430円で買い付けたものである。
処分 課徴金1850万円

 

■13 三井製糖株式会社との契約締結交渉者の役員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

違反態様 内部者取引
事件の概要  課徴金納付命令対象者は、日本甜菜製糖株式会社(以下「日本甜菜製糖」という。)の役員であった者であるが、三井製糖株式会社(以下「三井製糖」という。)と日本甜菜製糖株式の取得を伴う業務上の提携に係る契約の締結の交渉に関し、三井製糖の業務執行を決定する機関が、日本甜菜製糖と業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実を知りながら、上記重要事実の公表がされる前に、自己の計算において、三井製糖株式合計1000株を買付価額合計194万9490円で買い付けたものである。
処分 課徴金27万円

 

 

終わりに

 インサイダー取引については、証券市場の信頼性を確保するため、日常的な監査、監視が行われています。怪しい取引については、当局内で報告されており、調査が開始される場合もあります。一方、インサイダー取引に該当するかどうかは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報(重要事実)を利用して、自社株等を売買したかどうかで判断され、特に重要事実の発生の有無等については、判断が容易ではない場合もあり、慎重に検討する必要があります。

 

 インサイダー取引に関するご相談がございましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

 

 

文責:スパークル法律事務所

連絡先:TEL 03-6260-7155/ info@sparkle.legal 

本記事は、個別案件について法的助言を目的とするものではありません。
具体的案件については、当該案件の個別の状況に応じて、弁護士にご相談いただきますようお願い申し上げます。
取り上げてほしいテーマなど、皆様の忌憚ないご意見・ご要望をお寄せください。

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